【似て非なる】知恵と知識の違いを見分けて「教えてちゃん」に対応

知恵の輪 コミュニケーションTIPS

つねに忙しいひとり情シス。便利屋のように使おうとする”教えてちゃん”に対応する賢い方法は”知識”よりも”知恵”を伝授する事。知識(=知っている情報)よりも知恵(=情報の活用能力)を授けることを心がければおのずと自分で解決できるようになるかもしれません。

”教えてちゃん”に正しく応える―知恵と知識の違いを識別して

情シスはPCに対する困りごとを解決するために存在します。疑問・トラブルに応えるのがいわば仕事。誰も何も求めてこなくなったら情シスの存在価値がなくなってしまいます。※私の会社の場合

一方で、”正直、自分たちで解決してよ”と思うようなリクエストが飛んでくることもしばしば。情シスの業務というよりも、それぞれの責任の範疇でこれくらいはやってほしい、知っておいて欲しい思う事柄の多くがこちらに降ってきます。

  • エクセルのこの並べ替えどうやるんだったっけ?
  • メールの転送ってどこで出来たかな?
  • 最近、家のPCがやたら遅いんだけど、ウィルス?寿命?

もはや便利屋としか思われていないのでは?とさえ思ってしまします。当然そのすべてに応えていたのでは本来なすべき仕事の時間がどんどん削られて行ってしまいます。

頼む人は、情シスは”PCの事なら何でも知っている”と思っている

なぜ、何もかも情シスに聞こうとするのでしょうか?

  1. 情シスはPCの事なら何でも知っていると思っている
  2. 少なくとも自分よりは知識があるはず
  3. 調べるよりも聞いた方が早い
  4. ついクセで聞いてしまう

…といったところでしょう。しかし実際には情シスだって知らない事があります。ただ、一般の人とは明らかに違う点があります。それは知識知恵量と深みです。

知恵と知識の違いとは?

知識と知恵の違いとは何でしょうか?まずは知識・知恵とは何でしょうか?

知識】ある事項について知っていること。また、その内容(広辞苑)

知恵】物事の筋道を立て、計画し、正しく処理していく能力(大辞林)

情シスに当てはめてみますと次のように言えます。

  • 知識=すでに知っている情報データ
  • 知恵=その情報・データ活用する能力

頭の中に持っているもの=データをうまく活用できて初めて”知恵のある人”と表現出来そうです。

いくら知識があってもそれを活用(=知恵)できなければ意味がありません。逆に、知識不足は知恵で補えるものです。

 

テレビでよく見る法律相談的な番組は、知恵と知識の違いを際立たせる良い例といえます。…これこれこういうケースの場合、果たして有罪?無罪?…といった質問が出ますね。一般の方たちの中にも法律の知識が豊富な人はいるものです。番組中真相にかなり迫るパネラーさんが必ずいますね。

しかし専門家である弁護士が持ち合わせているのは知識だけではありません。

  1. どんな法律があるか?(=知識)
  2. その法律がどの場面でどのように適用されるか?(=知恵)

その両方を熟知しており、明確な解答を導き出し、出演者を唸らせます。

一般の方でも知識としての法律は覚える事が出来ますが、法律を適用・活用する能力(=知恵という意味では弁護士の方がはるかに上と言えるでしょう。

情シスが持っているもの~知識不足をも補える知恵

情シスにも得意分野というものがあり、当然知らない事もあります。バックエンドのデータべースは操作できても、フロントエンドのJavaScriptはよくわからない、という事があるかもしれません。ソフト的な部分は熟知していても電源回りの電気理論はさっぱり、という人もいる事でしょう。

しかし、情シスには問題を解決する能力分からない事を調べ上げる能力があります。言い換えれば”知恵”を持ち合わせている事になります。

そう考えると分からない事は情シスに教えてもらう、というのはあながち間違いではなさそうです。何しろ尋ねれば目的は達成されるわけですから。しかしそれをそのまま放置していては情シスの仕事はいっこうに減りません。

”教えて”と言われた場合、「答え」ではなく、「やり方」を教える方向で

やり方を教えるメリットとは?

  • 自ら選択し行ったものから達成感が生ずる

人は自ら選択した事柄から達成感を得るものです。教えられた事柄では満足できません。つまり、情シスが単に答えを教えただけではまた”教えて”が続きます。

  • やってみて初めて理解できる事がある

自分が一体何をわかっていなかったのか、それすらわからない”という事があります。自分でやってみて初めて、自分がわかっていなかった事、やりたかった事が理解できたりするものです。

答えを安易に教える事よりも、やり方を教えた方が当人にとってもメリットになります。知識ではなく知恵を授ける努力をするという事です。とはいってもそれが難しいのですが…。当人の意識を次のように徐々にステップアップさせたいと思います。

分からない事は情シスに答えを教えてもらう(←今はここ)

解決する方法を情シスに教えてもらう(←手助けをして)

方法は自分でネットで調べる(←いずれこうなる事が目標)

目標は自ら調べ解決するようになる事です。ただし、うまくいくかどうかは現段階での当人の理解度とやる気次第です。初めから上手くいく事を期待せずある意味長い目で見ながらサポートしていく必要があります。

やり方を教えるデメリットとは?

  • 短期的にみると、単純に答えを教えるよりも時間がかかる

恐らく情シス自身が自分でやってあげた方がはるかに早いことでしょう。しかし、中・長期的に見た場合、やり方を教えていった方がトータルで時間の節約になります。

解決する方法をどう教えるか? 3つのステップ

教える点での全体像を掴む為に「解決する方法を教える」ステップを3つに分けてみました。以下に挙げるのはあくまで理想的な形です。初めから上手くいくことは期待しないようにします。

①ゴールを確認し、プロセスを説明し、やって見せる

  1. ゴールとなる到達点を確認する
  2. 到達点までのプロセスを説明する
  3. 順番にプロセスを追ってやって見せる

まず何がやりたいのか、その趣旨を確かめます。方法は一つではないかもしれません。また、全く別の手段で達成できる可能性もあります。

例:

  • 直接のお願い:PDFを編集する方法が知りたい、と言われた
  • 何がしたかったのか:文面を再編集し使いまわしたかった
  • 新たな提案:タブレットでPDF画像を撮影、OfficeLensでOCR変換→Word形式で保存

ゴール地点をお互い確認しあったうえで、ゴールまでのプロセスを説明します。”何をするか”(What)?だけではなく”どうやるのか”(How)?それは”なぜなのか”(Why)?を説明しながらやって見せます。

②当人に実際にやってもらう

  1. 同じ手順を実際にやってみてもらう
  2. 常に到達点を意識させ、どんな風にしていったら良いか推論させフォローする

一度当人にやってみてもらいましょう。当人がすでに知っている方法がある場合には積極的にその自分の方法でやってみてもらいます。

たいていの場合、実際にやってもらおうとしてもやりたがらない物です。”出来るんだからやってよ。”となる事の方が多いでしょう。そんな時の為にも、初めからこちらが”自分はすべてを知り尽くしているオーラ”を出さない事も一つの手です。

いやぁ、実は私もよくわかってないんですよね。確かこうだったかな?!ちょっとやってみていただけますか?

そんな風に持っていくのも手です。いくつか前の節で、”情シスは知識はなくても知恵がある”と書きました。事実分からない事があった場合正直にそのように言った方がむしろ良いと言えます。

 

③達成感を味わってもらう

自分で解決した、という達成感を味わってもらうことは効果的です。出来るだけ手助けせずに出来れば満足度も上がる事でしょう。

そのためにも、事実に基づいた適度な誉め言葉をかける事も効果的です。

  • 「出来ましたね!スムーズに解決できてうれしいです!」
  • 「こんな方法もあったんですね。これは私も知りませんでした!」
  • 「手際が良いですね!」

 

誉め言葉に関しては以下の点に留意しましょう。

  • 嫌み・上から目線に感じさせないよう工夫する

こちらの意図を正しく伝える工夫が必要です。その為に出来る事として…

  1. 情シスとして普段から誠実な受け答えをするよう心掛けておく(うそ偽りがないと信じてもらえる)
  2. あくまで事実に基づいた誉め言葉をかける(おせじや二枚舌はNG・逆効果)
  3. 結果よりも出来るだけ努力の方を取り上げる
  4. 人と比べる誉め言葉ではなく、当人の可能性に注目した誉め言葉

目に見える結果や他の人と比べてほめる事ならは誰でも出来ますし、口から出まかせをいう事も出来てしまいます。恐らく教えてもらう側もそのあたりを敏感に感じ取る事でしょう。一方、事実に基づく誉め言葉をかける事や、当人の可能性や払った努力の方に注目する事は簡単ではありません。

もし誉めて伸ばす教え方身に着けたいのであれば、結果だけに注目するのではなくプロセスにも注目する視点を養うことは大切です。

調べ方・検索の仕方を教える

最後のステップです。分からない事があったらとにかくググる。この習慣を身に付けてもらいましょう。ここである人はこう考えるかもしれません。

検索の仕方って教わるものなの?

意外な事に検索の仕方が分からない、検索が苦手だという人はいるものです。背景にはキーワードの選び方を知らない、下手に触って壊しそうといった技術的な事から、変なサイトにつながるのでは?という恐怖心といったメンタル的な事柄まで理由は様々あるようです。

「検索の仕方」で教えたい事柄

以下の点に留意できます。

  • ヒットするキーワードの組み合わせ方を教える
  • 欲しい情報の見極め方を教える
  • 訪れても良いサイトと避けるべきサイトの違いを見極められるよう教える

以外な事で二の足を踏む人はいるものです。逆にどこかしこ構わずクリックするタイプの人も違った意味で困りものですけどね。

すでに知識を持つ情シスとしてはわからない人の気持ちがわからないという事もありえます。当人の心理を読み、相手の身に自分を置き換えることで的確なアドバイスを目指していけます。

いうまでもありませんが、これは会社が定めるインターネットの使用ルールに従った範囲内での話です。

 

まとめ 教えることを後回しにしない

正直な話、情シス自身がやってあげた方がはるかに早いです。教えている暇もない、と感じる事もある事でしょう。しかし、教えることを後回しにしてもメリットはあまりありません。いずれ自分の所につけが回ってきます。

 

人それぞれ適正というものがあります。どれだけ教えても呑み込みの悪い人もいます。当人の理解度によっては情シスの側に辛抱が求められるかもしれません。ですが、あきらめずに対応し続けるならば単純クエストのアウトソーシング化が達成できるはずです。また、うまくやれば他の人からの信頼を勝ち得る一要素ともなり得るでしょう。

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