前回は人前でスピーチをする事になった時、話を作る段階で陥りがちな3つの注意点を取り上げてみました。今回は実際に話を作る際に注目すべき5つのステップを取り上げます。話は組み立てるものなのです。
もしまだ前回分をご覧になっておられないようでしたら初めにそちらをご覧になられるようおすすめします。
話は組み立てるもの
前回に続いて人前でスピーチをする事になった人がどのように話を作ったらよいか、その秘訣を取り上げたいと思います。手紙の用に最初から最後まで一気に書き上げる手法では、どこをどう直せば効果的な話になるのかが見えずらい物です。話をしっかり組み立てる事で各要素を作りこめます。
組み立てるための要素
話の中に織り込みたい要素
- 関心をおこさせ聞き手を引き付ける序論
- 内容があり、かつ実践的な要点をいくつか含んだ本論
- やってみたい、有益だったという気持ちをおこさせる結論
効果的な話を作るために必要な事~順番に注意
序論・本論・結論の3要素を盛り込んだ効果的な話を作っていくためにも話を作る順番に注意する
- 扱いたい話題、資料などを集め全体像を把握するための調査
- テーマ(主題)を決める
- テーマに沿った本論を作る
- 序論を作る
- 結論を作る
効果的な話を作るための5つのステップ
では実際に上記5つのステップを順番に考えていきましょう。
次のような場面を想定しました。
1.まずは全体像を把握するための調査を行う
何を話したいのか?その話のネタとなる話題を広く集めます。話題やデータ、具体例なこれから話そうとする事柄の骨格となり得る情報を集めましょう。
そうは言ってもどこから手を付けたらよいでしょうか?例えば一つのキーワードとして、次のようなものをあげたとしましょう。
例えば、朝ごはんについて話そうかと思います。この段階ではボヤっとしたもので全くの思い付きのようなものです。漠然としており、何をどう調べてよいやら思いつきません。ではそこからどう調べていけますか?
どんな調査が出来るか?
5W1Hの法則で考えてみるだけで調査すべきポイントが明確に見えてきます。
- 何を食べたか
- いつ食べたか
- 誰と食べたか
- どれくらい食べたか
- どこで食べたか
- なぜ食べるのか
これだけでもかなりの情報量になりますね。
更に掘り下げてみましょう。例えばなぜ食べるのかを考えてみますと…
なぜ食べるのか?
- 習慣だから
- 健康のために
- 家族のだんらんを持ちたい
- やる気が起こるから
- 単に食べるのが好き
このように分析していけば調べるべきものの幅が広がって行きます。同じように、何を食べたのか、だれと食べたのか・・・といった具合にどんどん具体的に掘り下げていきますと色々と見えてきますね。こうして全体像が見えてくる事によって何となく自分の話したい話の方向性も見えてくるのではないでしょうか?
是非実際に調査した内容を項目ごとに分けて書き出してみましょう。
2.テーマを(主題)を決める
最初の段階で何となく頭の中に話に使えそうなデータがそろったと思います。そうしましたら次にテーマ(主題)を決めましょう。これは必須です。
テーマはこれから話そうとする事柄の方向性を示すもの、また視点とも言えます。例え5分の話であっても(5分の話だからこそ)話そうとするテーマをまず決めるようにしましょう。
どんなテーマをつけるか
主題と言っても本のタイトルを決める事とは違います。本のタイトルには抽象的な題名がつけれられ事が多くありますが、話のテーマはより具体的なものにする必要があります。以下の2つを比べてみて下さい。
- 今日の我が家の朝ごはん
- 朝ごはんをしっかりとる事のメリット
どちらが話の方向性や視点を示していると思われますか?
今日の我が家の朝ごはん:このテーマからは朝何を食べたのかといった単なる事実しか頭に浮んで来ません。もちろんそれでも良いのかもしれませんが、恐らく落ちも何もない話になってしまいかねません。(※HINT 良いテーマとは?もご覧下さい)
朝ごはんをしっかりとる事のメリット:このテーマですと話が膨らませやすくなります。ご飯の内容に加え、規則正しい生活習慣や健康の事、それらが仕事や家族に与える影響など適用できる分野は多岐にわたり話の幅も広げる事が出来そうです。
良いテーマとは?
話の途中で「あれ、自分は何を話してたんだっけ?」という風に話の筋を見失う事があります。そんな時、テーマを見ればすぐに話しに戻れるような、少なくとも話の本筋から大きく外れない程度に話を続けられるようだとしたら、それは良いテーマと言えるかもしれません。
3.テーマに沿った本論を作る
話すためのネタ(資料)もあつまりテーマも決まりました。では次に本論を作りましょう。ポイントを挙げてみます。
- テーマと直接結びつく要点を選ぶ
- 要点の数を絞る
- 本論の中に適用点を含める
テーマと直接結びつく要点を選ぶ
上の例では、朝ごはんをしっかりとる事のメリットといったテーマをたてました。そうしますと、テーマと直接結びつく要点は何といえますか?
「メリット」と言っても見る角度によって様々ですのでいくつか挙げてみます。
朝ごはんをしっかりとる事のメリットとは?
- 体の面でのメリット
- 生活態度に関わるメリット
- 人間関係に与えるメリット
- など等・・・
いくつか候補があがってきますので自分が論じたい内容に合わせ、ある程度の方向性を決めましょう。
要点の数を絞る
要点の数は絞るべきなのはなぜでしょうか?
- 話に付いてきやすい
- 記憶にとどめやすい
逆に要点が多いと話に付いていくのがやっとで飽きられてしまいつまらない話になってしまいます。
仮に5分間の話の場合要点は1つ、多くても2つ。またさらに長いスピーチ時間であったとしても5つまでにおさめた方が無難です。
要点をどのように絞るか?
例えば、主な要点として体の面でのメリットを選ぶとします。
体の面でのメリットをさらに細分化すると…
- 身体面でのメリット
- メンタル面でのメリット
上のような具合にさらに2項目に分ける事が出来ます。増やしすぎに注意ししっかり絞りつつ細分化しましょう。
話の幅を広げるため、本論の中に適用点を含める
ただ単に事実についてのみ論じるのではなく、それぞれの要点の中に、もしくは本論全体の末尾に適用点を加えます。適用点を加える事で話の幅を広げましょう。
例を挙げてみましょう。
身体面や精神面でメリットがある事について論じた後…
- それが自分の家族にどう影響する(した)か?
- それは自分のライフスタイルにどう影響する(した)か?
本論の結びに適用点を加える事によって、聞き手にこの話もそろそろ終盤である事を感じさせることも出来、結論に結び付けやすくなります。
本論の中で意識したい事
- 可能であれば聞いている人が自分にも関係があると感じさせる内容を心がける
単なる良い話では聞き手の記憶には残りにくいものです。共感を覚えるような、自分と関係があると感じさせる内容を心がける事が出来ます。
4.序論(話の導入部)を作る
本論を作ってから序論(話の導入部)を作ります。前回のお話でも取り上げましたが、この部分が多くの人にって意外と思えるところだと思います。
序論は期待を抱かせ本論に導くための呼び水です。
と言う風に逆算していくものの考え方が有効です。これによってテーマに沿った一貫性のある話に仕上げていきやすくなります。
序論にどのような事柄を含めると良いか?
では、ここまで考えてきた事を振り返ってみましょう。
- 本論:朝食をしっかりとる事は体やメンタル面に良い影響を与える。
- 適用:それら(メリット)は、自分の家族やライフスタイルにも関係してくる
こんな風に話が進んできました。そこに持っていくためにどうすれば良いか考える必要があります。皆さんでしたらどうされますか?
話を進めるためにも一例をあげたいと思います。
正直なところこの序論(導入部)がもっとも難しいところです。アイデア次第ですし個性が出る部分でもあります。場数を踏まないと簡単には出来ないかもしれません。だからこそ本論をきちんと仕上げてからこの序論の部分に取り掛かる事をお勧めするわけです。
序論を効果的なものとするコツ
- 質問形式で問いかける
- 実例やデータを活用してイメージさせる
では、ここまで考えてきた朝ごはんをしっかりとる事のメリットというテーマを例に先ほど考えた序論の部分を考えてみたいと思います。
質問形式で問いかける
聞き手に問いかけたり自問自答する形をとる事で、直接話に関わってもらうように出来ます。聞き手が心の中で簡単にイエスかノーで答えられるような簡潔なものが良いかもしれません。
実例やデータを活用してイメージさせる
統計に関する資料:農林水産省「食育に関する意識調査」(2017年11月実施)
具体的な数字を掲げ、なおかつ問いかける事で聞き手を話に引き込むことが出来ます。
データを用いる際の注意点
扱うデータには注意が必要です。あまりにもざっくりしすぎた曖昧な内容だと信ぴょう性が薄れかえって話の価値を落としてしまいます。逆に、あまりにも細かすぎたり自分や聞き手と関係のない、すぐにイメージしづらいものを取り上げたりすると混乱を与え例証する意味がなくなります。
本論につなげて完成させる
序論がある程度決まりましたら本論へつながる部分を作ってあげれば完成です。一例をあげてみましょう。
5.結論を作る
話には落ちが必要です。適切な結論を作り納得させる、記憶に残る話としましょう。
ここまでの流れをかんがえて結論を組み立てる
おさらいです。以下のような流れになって来ました。
テーマ:朝ごはんをしっかりとる事のメリット
序論:朝食をきちんととる事がなかなかできない自分。統計では3~50代の約5割はきちんととれている。しかし、朝食をきちんととる事にはメリットがあるので今一度考えてみたい
本論:朝食をきちんととる事が以下に与える影響を論じる
- 身体面
- メンタル面
適用:得られるメリットは自分の心身だけではない。家族全体に対しても良い影響を及ぼし、それは自分自身のライフスタイルにもかかわってくる
では、この流れでどんな結論部分を組み立てる事が出来ますか?
結論を組み立てるうえで心がけると良い事
- テーマに今一度言及する事により話に一貫性を持たせる
- 本論をざっとおさらいし要点を印象付ける
- 自分自身の感想・決意や、聞き手にとって行動の動機づけとなるような内容を含める
以上の点を踏まえて少し考えてみて下さい。恐らくここまで話を作ってきた後でしたら何となく言いたい事は見えてくるのではないかと思います。
例えば、次のような点を含める事が出来ます。
- 序論で自分がなかなか出来ていない事に触れているので、結論では今後の決意を含める
- 決意する動機となったのが多くのメリットに加え家族に与える影響だったことに触れる
- 健康であることで職場でもより良い働きが出来るという期待を含める
- なにより家族との生活をより豊かにしていきたいという希望を含める
すこしありきたりな内容になってしまいましたが、今回はあくまで例題ですのでご了承下さい。ほんの少し宿題になりそうなトラップも仕掛けてあります。ぜひ探してみて下さい。
まとめ 的を絞れば効果的なスピーチが出来る話を作る事は可能
今回はスピーチをするための話の作り方を5つのステップで考えてみました。手紙を書くがごとく初めから終わりまで書き上げるスタイルでは系統だった話の組み立ては難しくなります。逆に話の構成をきちんと理解し順を追って組み立てていくならば原稿を作る事はそれほど難しい事ではありません。
話の作り方は本来それだけで1冊本が書けるほど奥の深い分野です。今回の場合は”できる!シリーズ”の”やってみた”的な手法を用い例題を通して説明してきましたのでかなり大まかな内容となっています。方法は一つではありません。これを機にさらに探求してみても面白いかもしれませんね。
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