【サボり?!】タイムカード問題がひとり情シスのテレワーク化を阻む

テレワークのPC スケジュール管理

ひとり情シスもテレワーク化が出来れば良いのに”と思った事はありませんか?”うちでもそんな制度を作ってもらいたい”と思っても、立ちはだかるのはタイムカードに象徴される勤怠管理の問題です。働く時間の概念の違いも足かせになりかもしれません。とはいえ、むしろチャンスと捉える事も出来るかもしれません。

ひとり情シスがテレワークを希望 ー 考え得るメリット

ここ最近働き方改革という言葉を頻繁に耳にしますが、その中の一つにテレワーク・リモートワークといった働き方があります。個々のライフスタイルに合わせた働き方を柔軟に取り入れる事で生産性を上げる事が狙いなのだと思いますが、ひとり情シスにとってメリットはあるのでしょうか?

出社しなくても仕事ができる事の利点

  1. 自分のペースで仕事ができる
  2. 打ち込みたい事に打ち込める環境を選べる
  3. 子育て・介護といった家族の事情を考慮したワークスタイルが組める
  4. 出先でも対応が出来るため、トラブルへの対応が迅速になる

1,2:”自分のペースを保てる”ことはメリットになり得ます。SEとして、もしくはプログラマーとしての案件を進めているときに他から邪魔されずに仕事が出来たらいいのに、と思った事はありませんか?例えば、こんな経験をする事があるかもしれません。

  • せっかく良いアイディアが浮かんだのに他の仕事を頼まれ取り掛かれなかった
  • 昨日から通しで組んでいたロジックがあとちょっとで完成するという時に限って邪魔が入る
  • 複雑なコーディングをしている時に声を掛けられ思考が途切れてしまった

他からすると贅沢な要求のように感じるかもしれませんが、ひとりである事に慣れてしまているがゆえの率直な感想です。また単なる入力作業のような、正直誰でも出来る仕事は他に回してほしいと思う事もあります。

:子育て・介護といった家庭の事情を抱えつつ仕事をこなさなければならない人もいるかもしれません。少しでも負担を減らしたい、そんな時にリモートワーク制度があると助かるはず。また、介護の必要が生じたため転職を考えなければならなくなる事もあり得ます。ひとり情シスのようなポジションの場合、「やめてもらっては困る」といった引き留めもありうる事でしょう。そんな時にテレワークという選択肢があると会社・従業員双方、お互いに助かります。

4:トラブル時にも出先から迅速な対応が出来ます。ただし際限なく仕事をしなければならなくなるリスクもありますので諸刃の剣ともいえます。

技術的なハードルは高くない

自宅に居ながら仕事を行うというと真っ先に思い描くのがVPNの利用です。最近では比較的安価にVPNを構築できるようになっていますので社内ネットワークと何ら変わらない環境を自宅に持つことが可能です。

もちろんセキュリティーの問題など実際には越えねばならないハードルが新たに生じるのですが、費用対効果は決して悪くはありません。

テレワークに関する素朴な疑問

技術面は良しとして、雇用されている立場としては次のような素朴な疑問が生じます。

  1. 何時に始業し、何時に終業したのか、どうやって証明するのか?
  2. 雇用契約上、休憩時間をどのように取れば良いのか?
  3. サボっていると思われたくないが、どうすれば理解を得られるか?
  4. 他の従業員と自分とでは明らかに職種が違う場合、ひとり情シスだけがテレワークというのはあり得るか?

こうして考えてみると、素朴な疑問のいくつかは、勤務体系・雇用形態に関わる事と言えそうです。

テレワーク化を阻む”タイムカード問題”

そもそもテレワーク化は経営側が考える案件と言えます。しかし、雇用という契約関係にある当事者として情シスの側から発信するというのもありだと思います。超えなければならない壁は多々ありますが今回は2つ取り上げてみます。

  1. 就業規則の改定が必要になるという壁
  2. ”働いているとみなされる時間”に関する概念の違い

就業規則の作成と届け出の義務があるが、改定が必要になるという壁

事業所が「常時10人以上の労働者を使用する」場合就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出なければなりません。会社をいわゆるブラック化させないためにも、従業員がどれくらい働いたのかをきちんと管理する必要があります。その中の一つが”タイムカード”に象徴される、就業規則に基づく勤怠管理という事になります。

勤怠管理は従業員の働く環境と権利を守る事につながるものと期待されます。本来的には、しっかりと記録を取る事によって”うちの会社は規則に則って従業員に働いてもらっているホワイトな会社です”という事をいわば証明するわけです。もっとも制度を悪用しブラック化するという問題もあるようです。

テレワークにて働く従業員に対しても当然労働基準法が適用されます。何時から何時まで働いたのかを明確にしなければなりません。勤怠管理をタイムカードのみで管理している場合、在宅ではタイムカードが押せないという問題が出てきます。これは、”会社にいる人に代わりに押してもらえばいい”という単純な問題ではありません。

すでに「フレックスタイム制」「事業場外みなし労働時間制」を導入しているところはまだ修正ポイントが少なくていいのですが、業種によってはそのような制度がない事業所もあります。

テレワークを実現させるためにはこの就業規則の部分に切り込み、さらなるルール作りを行っていく必要が出てきます。それには、経営側の意向、総務、人事労務など関係者すべてとの連携など、多くの壁を乗り越えていく必要があります。

”働いているとみなされる時間”に関する概念の違いが壁になる事も

就業規則にも関係してきますが、見過ごせないのは職種違いによる”働いているとみなされる時間”の概念の違いです。仕事の種類によって当然時間の使い方が違いますし、概念も変わってきます。これが理解されないとテレワークが認められない可能性があります。

例えとして、休憩の取り方を取り上げてみましょう。次にあげる1や2と3とではニュアンスが異なります。

  1. 営業マンが立ち寄り先で自販機のコーヒーを買い一息いれる
  2. 内装さんが電気屋さんの作業終了待ちで待機している
  3. 工場ライン作業員が、10時から15分間休憩を取る

1の外回りの営業マンが自販機でコーヒーを買いホット一息入れる事をとがめる人は恐らくいません。

2の内装屋さんが他の職人さんが作業をしている間、自分の作業は小休止する。ごく普通の光景です。大抵の場合成果報酬制ですし、これをみてサボっているという人はいない事でしょう。

一方、3の工場のラインで働く人はどうでしょうか。手を動かす事が仕事とみなされる職種では、[手を休める=サボっている]とみなされる事があります。休憩時間は10時から15分間と決められていればそれ以外の時間は動いている必要があります。トイレに行く事すら気が引ける、という職場も中にはあるかもしれません。逆にこの”動いてさえいれば働いているとみなされる”ことも概念の違いだといえます。

ひとり情シスのような職種が特殊とみなされる事業所では、この労働とみなされる時間に対する概念の違いが引っ掛かりテレワーク化が実現しないという事もあるかもしれません。

情シスとして常に結果を出し続ける事が求められる事は理解できますが、”常に手を動かしていないと働いたとはみなされない”としたらナンセンスです。ひとり情シスを職種で例えるならば、ライン作業員よりもむしろ建設現場の職人さんに似ていると私は思います。

その点を経営者や総務・人事労務の人達に理解してもらえないとテレワーク化が一筋縄ではいかなくなる可能性があります。

まとめ テレワーク化は文字通り働き方を改革しなければ実現は難しそう

今回取り上げたように、テレワークを阻む要素の一つは[就業規則=働く事の概念]にあると言えそうです。それらを打ち破らなければテレワーク化は難しいかもしれません。そう考えるとこれはまさに”働き方改革”という事になりますね。

大手企業のように、働き方に関するルール作りが一通り済んでいるところでは問題ないのでしょうが、中小企業はまだまだこれからという所もあるかと思います。

本来これは経営側が考える事かもしれませんが、もし発言を許されるポジションにいるのでしたら、働く環境をより良いものとするための意見であれば積極的に発信していっても良いように思います。ただし墓穴を掘らないためにも、いつ、何を、どのように発言するか、その3要素には気を付けましょう。

もし自分の勤める事業所がまだまだ小さい規模であるならばむしろチャンスと言えるかもしれません。最近は勤怠管理もトータルのシステムとして導入するところが増えて気ました。クラウド化すればタイムカード問題も一気にクリアです。ひとり情シスとしての発言権を上げていければ、この分野でも重要なポジションに割って入れるかもしれません。

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