ZNNet Japanの記事に「ひとり情シス」の本当のところという連載記事があります。執筆されているのは”ひとり情シス”問題の第一人者、デルの清水博氏。その中にひとり情シスの転職事情に関する記事がありました。「3割が転職」、「優秀な人材は引く手あまた」との内容になるほど、納得です。記事を読んで感じたのはひとり情シスに求められているスキルとは”職人型”よりも”工務店型”なのでは?という事でした。
ひとり情シスの転職事情 IT業界の中では高い離職率
最近読んだZNNet Japanの記事に、ひとり情シスの転職事情を扱ったものがありました。
第15回:ひとり情シスの3割が転職–優秀な人材は転職市場で「引く手あまた」
その中で特に目を引いたのが…
- 中堅企業のIT担当者の21%が転職
- ひとり情シスの転職率は3割
といった部分です。
執筆されているのは”ひとり情シス”問題の第一人者といっても過言ではないデルの清水博氏。氏は”ひとり情シス”を取り巻く問題の全体像をご存知の方ですが、今回の記事ではひとり情シスの比較的高い離職率とその背景について取り上げられていました。
ひとり情シスは”ひとり”であるがゆえに何でも一人でこなさなければなりません。当然各方面に高いスキルが求められます。高いコミュニケーション能力、トラブルシューターとしての能力。優秀なひとり情シスは当然他社でも欲しがる人材となり得る訳です。
”ひとり”であるが故に得られるスキルが転職を後押し
この場ではこれ以上記事の内容を引用・言及することは控えますが、記事を読んで感じたことを自分なりにまとめてみたいと思います。
高い転職率になっているのにはそれなりの理由があると思われます。ワンオペで多忙になりがちなひとり情シスは「転職したいな」と考える機会が他より多い事でしょう。企業側としても、それまでひとりで何でもこなせてきたのならば即戦力になるのではと期待しその高いスキルを評価するのかもしれません。このように需要と供給がかみ合っているために高い転職率が成り立っているのでしょう。
ひとり情シスのすべてが自動的に優秀になるとは限りませんが、確かに情シスとしてスキルアップ出来てきた要素には”ひとり”であった事が多分に関係していると思われます。当然当人の能力や努力も必要ですが、環境ゆえに得られたものも少なからずあるのではないでしょうか。そう考えると”ひとり情シス”状態も悪くはないですね。
会社としては情シスに多くの人員を割けないが為に”ひとり情シス”状態だったはずなのに、その環境ゆえにスキルが磨かれ、それがもとで転職されてしまったとしたなら皮肉な話です。
ある意味”工務店”に似ているひとり情シス
多くのスキルを身に着けてきた優秀なひとり情シスはどちらかというと”職人”というよりもある意味”工務店”に似ているのでは、と思う事があります。
”工務店”とひとり情シスの共通点
素人目線ですが工務店に求められるであろうスキルとして次のようなものが思い浮かびます。
- 家作りの全体像を把握している必要がある
- すべての分野の作業工程、必要部材、工法に関する一定の知識が必要
- 必要な時に必要な職人を手配するスケジュール管理能力
- コミュニケーション能力(職人、クライアント、双方間)
- トラブル時の対応能力
いかがでしょうか。ひとり情シスに求められる能力にも通ずるものがあると思われませんか?
工務店型のスキルは認知されにくい事も
ただ、工務店型のスキルには必ずしもコンピューターとは関係のない項目も多く含められています。それらのスキルが情シスとしてのスキルとみなされるかどうかは、転職先で求められている事柄次第と言えるかもしれません。
もう一つの側面 ”職人”としてのひとり情シス
ひとり情シスには工務店とは違った”職人”としての一面もあります。シスアドのみならず、SE・プログラマーとしての仕事を兼務しておられるひとり情シスの皆さんは何かしら職人としての側面を持っているずです。
私個人としては生産管理システムのシステム内製化を成し遂げる過程でC#を用いたアプリ開発を行っています。いわゆるコード職人ですね。また、副業の方で建築関係の方にもかかわっているため、物理的なネットワーク工事も自前で行っています。このように一つ一つ扱っている業務内容を細かく見ていくと意外と多くの職人の顔を持っていることに気付きます。
”職人”としての誇りが持ちにくい?
しかし、ひとりで多くの職人の顔を持ち続ける事は容易ではありません。
ネットで色々と調べ物をしていると情シスと思われる方々のページにたどり着くことがあるのですが、そこで一つ興味深い事に気付きました。それは、「プログラマーとしては3流である」事を自ら前面に押し出して語られる方が意外と多い、という事です。
ひとり情シスはどうしても広く浅くになってしまいがちです。進歩の速いIT業界、すべての分野において職人と呼べるレベルを維持し続けるのは容易ではありません。SE・プログラマーとして一流であり続ける為にはそれ相応の継続した努力が必要になる事でしょう。まだまだ半人前という気持ちから職人としての誇りが持ちにくくなっているのでは?と考えます。
とはいえ、転職を考えた時、相手先企業が求めるスキルが必ずしも”職人”としてのスキルとは限りません。一芸に秀でた人をピンポイントで雇おうとしているのか、それとも、全体を統括出来る人材が欲しいのか、それによって自分のアピールポイントも変わってくることでしょう。
転職でひとり情シスに求められるスキルとは
今回は冒頭で取り上げた「ひとり情シス」の本当のところという連載記事をきっかけに、ひとり情シスの需要について考えてみました。
記事を読む限り、ひとり情シスに期待されているスキルとは”工務店型”なのではないか?と思います。少なくとも”職人型”よりも”工務店型”を求めている企業が少なからず存在すると言えるのではないでしょうか。
もちろんこの工務店型というのは私が勝手に連想して例えているだけで、この言葉が正しく当てはまるのか?という問題はありますが、何でも扱えるエキスパートとしてのスキルが評価されると考えれば、あながち外れていないのでは?と考えています。
工務店型スキルで自分を再評価してみる
こと職人として考えた場合、どうしても広く浅くになりがちなひとり情シスのスキル。もちろん広く深くである事に越したことはありません。しかし求められているのが工務店型であるのならばどうでしょうか?
「もしかすると自分の持つスキルや経験は十分に武器になるのでは?」
そんな風に自己再分析出来るかもしれません。”職人としての誇りが持ちにくい”といった引け目を感じる必要はまったくありません。堂々と知識の裾野を広げていけば良いのです。やがて、広く浅くから広く深くになっていけばより一層の自信が持てる事と思います。
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