「テレワークがストレスになる」。その要因はPCの使い方に原因があるかも。カギとなるのは「見る」部分と「入力」の部分をいかに快適にするか。テレワークにおけるPCの使用を労働衛生管理のVDT作業という観点から考えてみたいと思います。
テレワークのストレスを軽減さるための秘訣・VDTの観点から考察してみる
テレワーク=VDT作業の側面が大きい
普段なれないテレワークをしだすと様々なストレスにさらされることに気づきます。その一つがPCを使う事からくるストレス。肩が凝ったり腰が痛くなったり目が疲れたり…。マウス操作のせいで右手が腱鞘炎になりそう、という人もいるかもしれません。
テレワークというと真っ先に思いつくのがPCを使ったお仕事。この「画面を見ながらおこなう作業」の事をVDT(Visual Display Terminals)作業と言います。VDT作業はわたしたちの心身に少なからず負担を感じさせる事につながるものです。そのため厚生労働省は「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(以下ガイドラインと表記)という物を定め、出来る限りこのガイドラインに準じて労働衛生管理を行うよう指導しています。
この「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を分析すると、PCによる作業を効率よく快適に行う秘訣が見えてきます。今回はその中から「画面」と「入力装置」の2点に注目してみたいと思います。
秘訣1 画面(ディスプレイ)にこだわろう
ガイドラインより、「画面(ディスプレイ)」に関係する部分を取り上げてみましょう。(表現は一部わかりやすく言い換えています。)
- 目的とするVDT作業を負担なく遂行できる画面サイズであること。
- ディスプレイ画面上における照度は500ルクス以下
- 書類・キーボード上における照度は300ルクス以上
- ノングレア(反射しない)ディスプレイを用いること
- ディスプレイと40cm以上の視距離を確保
- ディスプレイは、その画面の上端が眼の高さとほぼ同じか、やや下になる高さにするこ
とが望ましい
こうしてみると、画面の種類やサイズ、画面までの距離、さらには画面や周りの照度といった事までガイドラインでは規定されていることがわかります。言われてみれば納得な内容ばかりですね。
ノートPCの場合、外付けディスプレイを積極的に活用する
「テレワークはノートPCで」という人は多いかと思いますが・・・背中を丸め、ディスプレイを間近でにらんでいませんか?
ノートPCの場合どうしても画面サイズが小さくなりがちです。しかも最近のノートPCは高性能ゆえに高解像度のものが増えてきました。つまり、字が小さいのです。おのずと近づきすぎてしまうのかもしれません。エンタメ目的でテカテカ液晶(グレア)だったりもします。
それを補うためにお勧めするのが外付けディスプレイ。作業効率が格段に上がります。最近のノートPCでしたら大抵映像出力端子(HDMI・DVI・VGA等)が付いているはず。これがあればケーブル一本で外付けディスプレイモニターを利用できます。
外付けディスプレイを選ぶ点でのポイント
どんなディスプレイを選ぶといいでしょうか?ポイントをあげてみます。
- ノングレアを選ぶ
- 適度な高解像度
- 23~26インチ画面
- HDMI接続・スピーカー付きが便利
ノングレアを選ぶ
テカテカ液晶(グレア)は余分なものの映り込みが起こりやすく入力作業には向きません。電灯や外光などを直に受けない工夫が必要など作業環境が制限されますので、ノングレア一択と考えてよいでしょう。
適度な高解像度を選ぶ
解像度=作業スペースとなります。高解像度になればなるほどエクセルのマスが沢山表示できると考えてください。しかし、高解像度にはデメリットもあります。4Kディスプレなどが話題となっていますが、解像度が高くなると反比例して見た目上の文字サイズが小さくなってしまいますので注意が必要です。次の項目で取り上げる「画面サイズ」にもかかわってきますが、いまですとFullHD・1920px×1080pxを選べば間違いないと思います。
23~26インチ程度の画面サイズ
ガイドラインでは文字の大きさについても言及されています。
文字高さが概ね3mm以上とするのが望ましい
例えば、次の場合、実際に見える文字の大きさはどれ位になるでしょうか。
- 23インチディスプレイ
- 解像度がFullHD(1920px×1080px)
- WORDで文字サイズ10.5pにて入力
- フォントはMS明朝
上にあげた条件で表示される文字高がだいたい実測値で3mmちょっとになります。つまり23インチあれば、例え解像度がFullHD(1920px×1080px)であっても文字サイズが小さすぎるという事はありません。値ごろ感もありますので、真っ先に23インチ以上をお勧めします。
画面は”大きければ大きいほど良い”という物でもない
大きければ大きいほど良いのかというと、実はそうでもありません。例えば32インチの画面ですと、今度は画面の上端が目線より上になってしまいかなり疲れます(経験済み)。また体から画面までの距離を適度に整えた場合、大きい画面では顔を動かす角度が広がり、これはこれで疲れるものです。
HDMI接続・スピーカー付きモデルを選ぶ
HDMIの利点は、映像信号と音声信号が一本のHDMIケーブルで扱える点にあります。音質は問いませんので(どのみち求めるだけ無駄という物ですし)スピーカー付きのタイプをお勧めします。あとからスピーカーを追加しようとすると大掛かりな事になってしまいますので初めが肝心です。
スピーカーなんて使わない?
業務用アプリによっては”音に意味を持たせている”物も多くあります。例えばWindows標準のBeep音、3種類くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか。
- 通常のBeep
- 案内や注意喚起のBeep
- 警告・禁止などのBeep
信号で言う青・黄・赤のイメージですね。この”音”のおかげで画面を見る回数を減らせる、見ずに連続入力作業が出来るという事もあります。
ノートPCに外部映像出力端子がない場合は・・・USB to HDMI変換アダプターを使えば、USB端子を通してHDMI端子のある外部ディスプレイへ出力できます。もちろん音声も外部ディスプレイから出すことが可能です。
秘訣2 「入力」にこだわろう
目で見る部分とともに、実際に入力操作する部分、「入力機器」にこだわる事もストレスの低減に寄与します。まずはガイドラインから「入力」に関係した部分を取り上げてみましょう。
- キーボードは、ディスプレイから分離して、その位置が作業者によって調整できる
ことが望ましい - 必要に応じて、マウス等を利用できるようにすることが望ましい
- マウスは、使用する者の手に適した形状及び大きさで、持ちやすく操作がしやすい
こと。 - キーボードのキー及びマウスのボタンは、ストローク及び押下力が適当であり、操
作したことを作業者が知覚し得ることが望ましい。
言い換えれば、ノートPCをそのまま使うのは望ましくないという事になりますね。
外付けキーボードを積極的に活用しよう
ノートPCで外付けマウスを使う人は多いですが、キーボードまで外付けにするという人はあまり見かけません。わざわざキーボードを外に出すという概念がないのかもしれませんがガイドラインでは次のようになっています。
キーボードは、ディスプレイから分離して、その位置が作業者によって調整できることが望ましい
これってノートPCの場合はどうするの?と思われる事でしょう。ちゃんと書かれていました。
ノート型機器は、通常、ディスプレイとキーボードを分離できないので、小型のノート型機器で長時間のVDT作業を行う場合については、外付けキーボードを使用することが望ましい。
ノートPCこそぜひ分離を試みて欲しいところです。入力効率が格段に向上しますのでお勧めです。
ノートPCのキーボードのデメリットを考えてみる
ノートPCのキーボード、使いにくくないですか?「こんなものだ」という思い込みを外し、少し考えてみてください。
- スタイリッシュだけど薄っぺらくて打ちにくい
- キー配列が微妙に独自なため、ブラインドタッチがしにくい
- キーピッチが狭すぎ・キーストロークが浅すぎ
- 取り外せないので適当な位置に置けない
もちろんモデルによって様々ですが、違和感のある部分はどこかしらあるはず。普段会社でJIS配列のキーピッチ19mm、ストローク2mmちょっとのキーボードに慣れていると、ノートPCが使いにくく感じてしまうかもしれません。誤入力は非効率的なだけでなくストレスにもなるものです。
作業スペースが気になるならテンキーレスを選んでみる
長年のSE生活でたどり着いた結論は、自分の場合テンキーレスがベストという事でした。テンキー自体は外付けテンキーボードを追加すればOKです。
主な理由はマウスを操作するスペースを確保できるという事。フルサイズキーボードはどうしても横幅が広くなりがち。そうするとマウスの操作がかなり遠い位置になってしまうのです。ちょっとの差なのですが、作業効率が向上しました。テンキーレスキーボードの事は別記事の中でも触れられていますのでよかったらご覧ください。
ワイヤレスキーボードは便利だが接続方法に注意
特に理由がなければUSB接続の無線方式を選べば問題ないでしょう。しかし、注意点もあります。通常ワイヤレスキーボードには2種類のタイプがあります。
- 無線式
- Bluetooth
Bluetoothも仕組みとしては無線式なのですが、通常「無線式」というとUSBレシーバー(いわゆる”トングル”)が付属しキーボードとやり取りするタイプの物の事を差して「無線式(もしくはただの”無線”)」と言います。Bluetoothの場合は初めからBluetoothと明示されてますので、両者を混同する事はないでしょう。
「無線式」キーボードで気を付けたい事
USBレシーバーが必要ですので、必ずPC本体側のUSB端子を一つ消費します。無線マウスや外付けディスプレイ、USBメモリなどUSB端子の数は常に足りていない事でしょう。ノートPCには大抵Bluetooth機能が備わっているはずですのでBluetooth方式を選べば端子の数を一つ減らせます。
Bluetooth方式のキーボードで気を付けたい事
Bluetoothキーボード最大の弱点は、”省電力モードで接続が切れやすい”事。
常に電波をやり取りしてると当然バッテリーを消費します。そのため大抵のモデルではしばらく入力がないと”省電力モード”に移行するようになっているのです。この省電力モードが曲者。入力があって初めてスタンバイから復旧するわけですので、往々にして1文字目を取りこぼすという事になってしまうのです。(”あいうえお”と打つと、”いうえお”と入力される)
各社様々なモデルが出ています。省電力に移行するタイミングが早かったり遅めだったり、スタンバイからの復旧が早い・レスポンスのいいタイプや遅いタイプ。Bluetoothの規格にもよりけりだったりします。こればかりは何ともなりません。レビューを参考にしつつ手あたり次第試すしかないかもしれません。
自分のキーボードの使用頻度、スタイルを考えつつ考慮出来るでしょう。常に何かしら入力作業をしている人でしたらさほど問題にはなりません。また1文字目の反応が悪くても別に気にしないという人もいる事でしょう。その人の仕事スタイル次第ですね。ちなみに私はこれまでBluetooth方式を5台ほど試し満足できたのは1台だけでした。結局現在は有線式のキーボードで落ち着いています。
ノートPCにマウスは必須とも言える
ガイドラインでは次のようになっています。
必要に応じて、マウス等を利用できるようにすることが望ましい
必要に応じてとありますが、必要じゃない場面が思い浮かびません。むしろマウスが使えない時以外は常に使うものであるという感覚です。
作業スペースの関係でマウスが使えないという場合は、むしろスペースを作る努力をしましょう。もちろんどうしようもない事もあるかと思います。立って操作するとか、キッチンでPCが使いたいとか…。いずれにしても特殊な場合は除いてマウスは必須と捉えてください。それくらい入力効率が上がります。
マウスを選ぶ際にもいくつかコツがあります。
3ボタンよりも5ボタン
経理担当の方が「今まで使っていたマウスが壊れたので新しくマウスを買った」と見せてくれました。安いという理由で選んだ3ボタンマウス。もちろん本人がそれで納得しているならば問題ありません。が、できれば3ボタンよりも5ボタンの方をお勧めします。
5ボタンとは?
- 左クリック
- 右クリック
- 中央ホイール
これら3つに加えて
- ブラウザーの進む
- ブラウザーの戻る
の2つのボタンが追加されている物です。仕事上WEBで調べ物をする方たちはあると便利です。デメリットは快適すぎてつい仕事とは無関係のものを色々と見てしまう事。あ、これはボタンのせいではないですね。
接続方法、特に「無線式」に注意
安いからと言って有線マウスを買ってしまうと激しく後悔する事になります。基本的には無線一択と考えてよいでしょう。
マウスにもUSBトングルを使った無線式とBluetooth方式の2種類がありますが、キーボードの項目と一緒で接続方式に注意です。特に注意したいのは無線式。2.4Ghzの無線を使うタイプが多いため、Wifiなど他の無線機器と混信する事があります。マウスポインタ―が飛んだり、反応が悪かったりした場合、他に使っている無線機器がないかどうか考えてみてください。もしかすると電波が多くて混信している可能性があります。
まとめ 画面と入力機器を吟味し、積極的に外付けを選択。ストレス軽減につながるかも
今回はテレワークでのストレスを労働衛生管理のVDT作業という観点から考えてみました。このガイドラインから見えてくるのが「画面」と「入力機器」を適正に選ぶという事です。もちろん感じ方は人それぞれ。今回取り上げたガイドラインがそのままそっくり当てはまるとは限りません。とはいえ、ガイドラインはかなりの程度、的を射た指摘をしているように感じました。
ノートPCの場合、本体としての機能しか使わないという事になります。”ノートである意味があるのか”という事にもなってしまいますが、自宅に持ち込んでのテレワークを考えると案外良い選択肢かもしれません。
外付けディスプレイ、キーボード、マウス、これらを追加購入しても恐らく2万円程度の予算でそろえることが出来るはず。費用対効果は抜群です。10年以上このスタイルを続けている管理人本人が言うのですから間違いありません。皆様もいかがでしょうか?
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