ノートPCでテレワークをしていると感じる「画面が小さい」というプチストレス。そうだ、HDMI端子があるんだから液晶テレビをPCモニター代わりにすれば良いのでは?と思われるかも。しかし、これがむしろストレスの原因に?!VDT作業における労働衛生管理のためのガイドラインから気を付けたい点をピックアップしてみました。
テレワークでのストレス軽減 ガイドラインから見えてくること
テレワークが普及し、今度はいかに快適にお仕事が出来るか?という事に皆さんの意識が移ってきている事と思います。そんな時に役立つのが厚生労働省が出している「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(以下ガイドラインと表記)。「画面を見ながらおこなう作業」の事をVDT(Visual Display Terminals)作業と言います。
ガイドラインは、簡単に言えば企業側に対し”ブラックな働き方にならないよう、きちんと目を配ってね”という事でまとめられている物です。このガイドライン、当然テレワークにも当てはまります。一部抜粋してみましょう。
在宅ワーカーに対する配慮事項
VDT機器等の情報通信機器を活用している在宅ワーカーの場合、作業机、照明環境、作業
時間等について、労働衛生管理面からは必ずしも適切でないことがある。眼疲労、肩こり、腰痛など在宅ワーカーの身体的自覚症状の訴えが多いことも調査で示されている。
テレワークは”ノートPC一つ広げる事が出来るスペースさえあれば仕事が出来る”と思われがちです。しかし事はそう簡単ではありません。
ガイドラインからストレス低減法を模索しましょう。今回は液晶テレビはPCモニター代わりになり得るか?です。
液晶テレビはPCモニター替わりになり得るか?
ノートPCでテレワークをしているとどうしても画面サイズが気になってしまいます。そこで、いっそのこと外付けディスプレイを追加するのはどうか?という事を以前提案いたしました。
そうすると、おのずと”液晶テレビが使えるのではないか?”と考えられると思います。
確かにHDMI端子に接続すればPCモニターとしての役割を果たしてくれます。しかし、ガイドラインを見てみるといくつか注意点がある事に気づきます。
画面の上端が目線より上に来てしまう
ガイドラインでは次のようになっています。
ディスプレイは、その画面の上端が眼の高さとほぼ同じか、やや下になる高さにするこ
とが望ましい
これを”リビングにテレビとソファーがある”という環境をイメージして説明しましょう。次のイラストは画面の上端が目線より上の図です。
これをガイドラインのように画面の上端を目線と同じにしようとすると・・・
画面の位置をかなり下げなければなりません。もしくは椅子に座る座面を高くする必要があります。
”ちょっとくらいならば平気”と思われますか?
目線より上に画面の上端が来ると常に少しだけ見上げる形になるため疲れがだんだんと蓄積していくのです。この、ちょっと我慢すれば何とかなってしまう故に知らぬ間にストレスが蓄積していってしまうという事はないでしょうか。
液晶テレビを中心に環境を整える事の難しさ
通常設置場所を動かす事のない今ある液晶テレビを活用する場合、カギとなってくるのが机と椅子です。
まずはガイドラインにある椅子と机の項目を抜粋してあげてみます。
椅子:
床からの座面の高さは、作業者の体形に合わせて、適切な状態に調整できること。
適当な背もたれを有していること。また、背もたれは、傾きを調整できることが望まし
い。
机:
作業面は、キーボード、書類、マウスその他VDT作業に必要なものが適切に配置でき
る広さであること。作業者の脚の周囲の空間は、VDT作業中に脚が窮屈でない大きさのものであること。
これら机や椅子に関する要件を加えたうえで必要な環境を簡単に要約しますと・・・
- 液晶テレビから適度に離れた位置に座る
- 目線は画面上端になる高さ
- 適度な広さの机を準備
- 適度な高さの椅子を準備
これらを全て整える事は難しいように感じますね。では細かく見ていきましょう。
液晶テレビから適度に離れた位置に座る
液晶テレビの位置を変えない前提では、座る位置自体を調整する事になりますが、次のような条件をクリアしなければなりません。
- 画面の大きさに比例してテレビとの距離も取らなければならない
- 目線が画面上端に来るような高さになる椅子を準備する
- 画面サイズが大きいとどうしても画面の上端が目線以上になってしまう
- 適度な距離、高さにしたくても、その場所に適切な机と椅子を置けるとは限らない
”見る”部分からくるストレスは大変大きいと言えます。それを解消したいわけですから、出来るだけ合わせたいところです。
机と椅子の高さは大切
机と椅子の高さは大切です。それはキーボードを打つ位置の調整につながるからです。
出典:富士通公式サイト「パソコンの利用と健康」より
椅子に座った時、ちょうど肘の高さくらいにキーボードがあると楽に入力が出来ます。(上図90°以上の部分)
キーボードを打つ位置が高くなってくると肩を張ったような状態になって肩や腕に負担が来やすくストレスの原因になります。キーボード面が肘より下の方がまだいいですが、そうすると今度は机の下に脚を入れるスペースが足りなくなってしまうかもしれません。
液晶テレビの解像度は実はそれほど高くない事も
お勧めの解像度はFullHD(1920px × 1080px)なのですが、最も値ごろ感のある30インチ以下の液晶テレビのほとんどはHD(1366px × 768px)という低解像度になってしまいます。特にPCモニター代わりにするには23~26インチくらいが最も使いやすいのですが、そのサイズの液晶は大抵HDの解像度になるかと思います。FullHDを選ぼうとすると40インチ以上の大きなサイズのテレビになる傾向にあります。
解像度が低いと画面自体は大きくても作業スペースとしてはそれほど大きな面積は確保できませんので注意が必要です。表示面積が狭いと作業効率が落ち、それはそれでストレスになります。メインモニターとしては少々きついかもしれませんのでサブ的な扱いならば良いかもしれません。
結局、ストレスなく液晶テレビをPCモニター代わりに使用できるかどうかは環境次第
今ある液晶テレビを活用したい場合、画面サイズ・解像度はすでに決まっています。また設置場所も変更なしという前提ですと、適度な位置に、適切な椅子や机を準備できるかどうか?がカギとなる事がわかりました。
”こんなの全部は無理”と思われるかもしれません。勘違いしないでいただきたいのは机上論を展開し、単なるべき論を言わんとしてるのではありません。どうすればストレスを低減できるかという視点でガイドラインから読み取れる事を取り上げているにすぎません。
もしいくらかでもストレスを感じられるようでしたら今回取り上げた項目を今一度チェックしてみて下さい。
まとめ ストレスのないテレワークの実現には環境の整備が大切
一度試して事をお勧めします
今回はどうすればストレスなくテレワークを行えるのか?という事で、特に今ある液晶テレビは活用できるか?という話題を取り上げてみました。大抵の場合HDMIケーブル一本あれば試してみる事が出来るはずです。一度どんな感じか試してみられることをお勧めします。そのうえで問題点を見極められると良いでしょう。
今回取り上げたのはあくまでガイドライン上での事です。100%は無理かもしれませんが、少なくともヒントになる視点が多く含められていることがわかりました。もし試してみて、”何かおかしいな?”と感じたら、ぜひこの記事を読み返してみて下さい。その違和感の原因がどこにあるかがわかるかもしれません。
”新しい日常”へと変化するであろう、今後の社会。テレワークに関しても必要なところには積極的に投資をしてストレスをためない工夫をしたいものです。
ノートPC一つあれば出来ると思われがちなテレワーク、ストレスのないお仕事のため経営側にも積極的にかかわってもらいたい
”ノートPC一つあればどこでも仕事が出来る”と考えられる方も多いかと思います。確かに出来ることは出来ますが、決して快適とは言えないかもしれません。企業側には労働者の労働環境を整える責任がありますが、テレワークだからといってスルーしてよいわけではありません。今回の記事、本当に読んでもらいたいのはむしろ経営・管理側の人たちだったりします。
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